こんにちは、9条の会の小森陽一と申します。9条の会は昨年6月10日に井上ひさしさん、大江健三郎さん、小田実さん、梅原猛さん、奥平康弘さん、加藤周一さん、澤地久枝さん、鶴見俊輔さん、三木睦子さんの9名で、9条を中心とした憲法を守るという一点ですべての人が力をあわせようという呼びかけをしました。そして7月24日の東京での発足記念講演会をはじめとして、大阪、京都、仙台、札幌、長野と昨年は5ケ所で後援会を開きました。今年は2月25日、横浜、3月12日広島、3月19日福岡となります。これで当初計画した主要都市での講演会が一区切りします。4月22日に、次にどのような運動をするのか表明をしたい。そういうスケジュールです。
これまでのとりくみ 大きな変化が
6月10日に発足したとき、私たちは、あの9名の方が声を上げたのだから、必ず大きく報道されるだろうと思っていたのですが、マスメディアは取り上げてくれませんでした。今、NH Kの安倍元幹事長らの番組への圧力問題で、週刊誌でたたかれている本田さんという朝日新聞社会部の記者がデスクと交渉してようやくこのくらいの記事が写真入で、朝日新聞には載りました。けれどもわずか半年ですがマスメデイアの取り上げ方は大きく変わってきています。これは私たちが草の根からの運動をほんとうに一つ一つ積み重ねていけば、社会の関心もマスメデイアの取り上げ方も大きく変わってくるんだという、大事なことを示しているのではないかと思います。
いい例だけお話します。私は10年間、北海道の大学大学院で過ごしました。札幌です。北海道では他の全国紙より一番シェアを持っているのは、地元の北海道新聞です。この新聞は多くのマスメデイアがあのイラクで人質となった高遠さん、郡山さん、今井さんに対し自己責任論といっていたのに対して、自己責任論の立場をとらずに、きちっと反論していました。
札幌では11月25日に講演会を開きました。担当の若い記者は「どうせ護憲派のしょぼい集会だろう」と思っていたらしくて、開演直前に会場に来たらしいんです。すでにそのとき札幌市民会館は会場ロビーも一杯になってしまって、数百人の方にお帰りいただいていた段階だったんです。外で聞いていただくわけにいかないほど雪が降って寒かったんです。多くの方が帰る中、北海道新聞の記者は「私は報道だから中に入れてくれ」と叫びながら入ったそうなんです。
中も廊下の人が立って聞くほどびっしりの状態で、その貴社は「大変なことが起こっている」とデスクに第一報を入れて、翌日は大きな記事で取り上げてくれました。その記者は何でこんな大きな力で集まってくるのか不思議に思って大阪や京都、仙台の集会に参加した人を取材し、12月の長野の講演会までわざわざ取材をして、12月2日に大きな特集記事を載せてくれたんです。そして1週間後には編集委員が東京の私に取材に来て大きな写真入の記事を載せてくださいました。
このように9条の会の運動を地方紙は一つ一つ報道してきたんです。そういう地方紙で9条の会の講演会の成功が報じられることをとうして、憲法に対する問題意識も新聞社全体として変わっていく、ということも起きています。
これは年末自由民主党が憲法改悪のための改定草案というの出しました。これは昨年12月5日のことです。島根の松江で9条の会の準備会が開催されるというので私は飛行機に乗って松江に飛びました。飛行機の中で全国紙4紙を読んで講演のときの最初の出だしのねたをいつも仕込んでおくんです。松江について宿泊施設のロビーに私の読んだことのない「山陰中央新報」という地方紙があったんですね。その新聞が松江の私の講演会を事前に報道してくれたんです。
島根は保守的な地域ではありますがそれなりの見識を持った新聞社だったようです。その「山陰中央新報」の一面に現役の陸上自衛隊幹部が自由民主党の憲法改悪草案の安全保障のところの提案をし、それが丸ごと取り上げられている、これは憲法99条違反ではないかという記事が、載っていたんです。
地方新聞というのは時事通信とか共同通信が全国で起きたこと世界で起きたことをニュースとして配信しているんですね。ですから、共同通信系の配信を受けている地方紙が、ずっと9条の会の活動を報じていてくれたんです。だから「山陰中央新報」のデスクも「これは大事だ」とこのニュースを一面に載せたんだと思います。
12月5日にこのニュースが一面に載ったのは共同通信配信を受けている地方紙だけです。朝日は12月6日でした。毎日は7日でした。つまりどのニュースが大切なのか、国民に知らせなければいけないのか、このことの判断は私たちの運動の積み重ねを通して、一つ一つ変えていくことが出来る。9条の会は出来上がってまだ半年ぐらいです。しかしわずか半年ですがそういう大きな局面の転換を作り出していると思います。皆さんごらになったと思いますが、1月22日と23日、NHKで憲法問題の特別番組がありました。1夜目は大江健三郎さんが2夜目は加藤周一さんが出演なさいました。これで一気に全国に9条の会が知れ渡り、その翌日から9条の会の事務局の電話が鳴り止まない。こういう状態になっています。ホームページのアクセスは100万件近くになっています。ここに9条の会がどれだけ多くの方の思いと願いを実現する会として、アピールを出す意味があったのかということを改めて実感しています。
さきほど申し上げたように、地方の講演会はすべての会場の定員の倍以上、上回る人たちが押しかけてくださいました。それだけ取り上げれば事務局としては大成功、すばらしい運動の成果だというふうに言いたいところなんですが、事務局としてはそういう判断はしていません。私も駆けつけた会場はどこも予想を上回る盛況でした。今日もそうだろうと思います。しかしこれで成功だ、と思わないでいただきたい。私たちは国民投票のときに、有権者の過半数の人たちが、やっぱり9条を変えないで、日本は戦争をする国にならない、軍隊を持つ国にならない、そういう投票をしてもらうまでが私たちの運動なんです。
申し訳ない言い方を、いろいろな所で、させていただいているんですが、「別の集会で何度も、お会いした方がチラホラいらっしゃいます。いつもがんばっている方は、こういうところに来なくてもいいんです。このような集会に一度も来たことがない方にその席を譲っていただきたい。そういう運動に組み替えなおしたとき、今私たちが目指している方向へ大きく飛躍することが、できるのではないか。わたしたちのめざしているのはそのような運動だろうと思います。
それは9条の会のアピールの一番最後にこう述べられています。「私たちは平和を求める世界の市民と手をつなぐために、あらためて憲法9条を激動する世界に輝かせたいと考えます。そのためにはこの国の主権者である国民一人一人が9条をもつ日本国憲法を自分のものとして選びなおし、日々行使していくことが必要です。それは国の未来のあり方に対する、主権者の責任です。日本と世界の平和な未来のために日本国憲法を守るという一点で手をつなぎ、「改憲」の企てを阻むため、一人ひとりができる、あらゆる努力を、いますぐ始めることを訴えます」。
短い文章の中ですが主権者という言葉が2度使われています。あらためて自分たちが主権者であるということを選び直す、これが私たち9条の会の大事な出発点なんですね。
憲法は国をしばるもの
さてそこで東久留米の9条を心から守ろうという皆さんにちょっと調査をしたいと思うんです。
1問目は右手を,2問目は左手を上げてください。まず1問目です。「日本国憲法はこの国の最高法規である」とお考えの方、右手を上げてください。はい、ありがとうございます。100%ですね。素直な皆さんですね。(笑い)では2問目です。「日本国憲法は国民が守らなければならない最高法規である」とお考えの方、左手をあげてください。はい、半分ぐらいでしょうか。2問目は、間違いなんです。左手を上げた方は本当は左じゃないんです。(笑い)ここに、憲法とはいかなる意味の最高法規なのかというポイントがあります。
わかりやすくするために私の個人的なことをお話させていただきます。2003年に私は国立大学法人法に反対しました。しかし残念ながらこの法律は通ってしまいました。東京大学教授という肩書きは変わりませんが、私は2004年4月1日付で国家公務員ではなくなりました。国立大学法人職員というのが正式な私の業務形態です。
私は10年間世田谷の成城大学というところに勤めて92年に東大に移りました。4月1日に辞令を渡すというのでその年採用された東大の職員全員が呼ばれて、総長から挨拶があって、さて辞令を渡すというとき宣誓をしなければいけないんです。私は根がいい加減な人間でして、39歳のそのときまで宣誓ということしたことなかったんです。
結婚のときも人間という有限な生き物は永遠の愛など誓えるものではないと考えました。(笑い)愛情というものは朝起きて何ぼなものだという具合で、一切儀式めいたことはせずに、なし崩し的に共同生活にはいったという・・・・ですから誓いを立てたということがないんです。
でも誓いを立てないと辞令がもらえない。そのとき宣誓書というのを見てなるほど憲法とは、こういう意味での最高法規なんだということを自覚しました。そこには「私は日本国憲法を遵守しそして国民のために働きます。こういわないと国家公務員になっちゃいけないんです。
お分かりですね。国家公務員というのは、一個人としては思想信条、政治的な立場があるけれども、最終的には文部省の業務命令に従って働かなければいけないんです。国家権力の手先になるわけです。(笑い)
国家権力の手先になるやつは自分の全身全霊に憲法の縛りをかけなければいけないということです。憲法99条、最高法規、憲法尊重擁護の義務。こう書いてあります。「天皇または摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う」皆さん一人ひとりの主権者である個人としての国民が国家を担っている公務員をはじめとする国家権力の中にいる人たち。日本は3権分立ですから国会議員は立法府の最高府ですね。国務大臣その他の閣僚たちは行政を担当している。裁判官は司法を担当している。この3つの権力を私たち主権者の側から国家が暴走しないように私たちのいうことを聞いて仕事をするように縛りをかける最高法規が憲法なんです。
戦争と憲法
憲法98条はこう言います。「この憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の全部又は一部は、その効力を有しない」・私たち国民が守らされる法律が、本当に私たちの基本的人権を無視していないか、正当なものかどうか、私たちが守る諸法規にチェックをかける、主権者の権利を侵さないようにするための最高法規が憲法という最高法規なんです。つまり皆さん一人ひとりが国家に守らせる最高法規が憲法なんです。
国家がしてはいけないことが規定されているのが憲法であります。私たち主権者の基本的人権が規定してあるのは第3章、10条から40条までです。30条は税金を納めなければいけないと義務が書いてあります。これを抜いて29条分は、ほとんど国家がしてはいけないことが書いてあります。そのしてはいけないこと、一番やってはいけないことが9条で規定してある、戦争放棄ということなんです。
そのことは日本国憲法前文にも、はっきりとこう記されています。「政府の行為によって再び戦争の惨禍がおこることのないようにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する」。私たちには主権者であるための前提が、政府の行為によって戦争が起こらないようにするという憲法9条なんです。
もし政府が宣戦布告をして、戦争する権利、これを国権の発動たる戦争と言います。国権というのは国家の主権です。主権というのは他の何者によっても侵されてはならない統治権のことです。これを国家や政府が持っているのではない。私たち一人ひとりの個人が持っているのだ。そのことをはっきり100%実現するためには、国が戦争する国であってはだめだ、ということを日本国憲法前文は、はっきりと宣言しています。
それはそうですね、国が戦争を始めてしまったら、その国の国籍を持っている個人としての国民は問答無用で、その戦争の当事者にさせられてしまうんです。ひとの国に攻め入っているときは自覚しないかもしれないけれど、しかし負けが込んできて、敵がどんどん攻撃をかけてくるという事態になったとき、戦争をやめていなければ一人ひとりの国民は逃げ惑い、殺されることを待つばかりです。
それが第2次世界大戦の最後の時期、日本の大都市のB29 による空襲を体験した多くの人たちの記憶に残っていることです。そして先ほど古田さんのお話にもありましたように、1945年の7月26日、このとき最後通告としてのポツダム宣言が発せられたにもかかわらず、日本の主権者であった天皇は国体護持がはっきりしないということでポツダム宣言受諾を引き伸ばしました。
その結果アメリカは8月6日広島、9日長崎に大量無差別殺戮兵器としての原爆を投下したわけです。どこから見てもあれは非戦闘員を無差別に殺す殺戮兵器の使用です。けれどもアメリカ政府は、「原爆を落とさなければ日本は戦争をやめなかったではないか」と今でもなお正当化しています。これが政府の行為によって行われる戦争が一人ひとりの国民に何をもたらすのかということです。戦争しているアメリカの国籍を持つ人々がテロの標的にされるというのもそのためなんです。そのことを絶対にしない、こう宣言したのが日本国憲法第9条であります。
それが私たちが主権者であることを支えている。この関係が今最も大事な憲法をめぐる論点であり争点です。
今憲法を変えようとしている、現役の自衛官の提案をそのまま入れて、自分たちの党の憲法改悪草案を作った、自由民主党という政党は、1954年に防衛庁と自衛隊が創設されたときに、これは9条に反するから9条を変える、そのためには3分の2 以上の議席が必要だということで当時の自由党と民主党が保守合同をして出来た政党です。自由民主党は根っから9条を変えるためだけにある政党なんですね。
自民党は憲法9条を変えるためにできた
55年の総選挙の議席数で、自由党と民主党あわせて3分の2に届く、参議院でもとらなければと鳩山内閣のもと56年の参議院選挙に9条を変えるということで挑んだが、これが成功しなかった。
その結果、自由民主党の国会議員と国務大臣は原理的にうそつきにならなければならない事態になったんです。これが解釈改憲なんです。ただの自由民主党員は9条を変えろといってもいいんです。言論の自由ですから。でも国会議員になったり国家公務員になった自民党員その中でも、最も責任ある国務大臣、特に総理大臣は99条で憲法重視の義務が生じるんです。本音では「防衛庁、自衛隊は憲法9条に違反している、だから9条を変えなきゃいけない」と言っている人たちが、3分の2は取れていないが過半数は取っていますから自由民主党の総裁という人がそのまま内閣総理大臣になるわけです。
総理大臣は「防衛庁自衛隊は憲法9条違反ではございません。合憲でございます。戦力ではございません。自衛のための最低限の実力です。こう言わなければいけない。憲法というのはそれだけ厳しく規制がかかるものなんです。
ですから9条の会のメンバーの一人である大江健三郎さんがノーベル賞をおもらいになったときに、前にノーベル文学賞をもらった川端康成さんは「美しい日本の私」という講演をしましたが、大江さんはそれをもじって「あいまいな日本の私」という講演をなさいました。
これは構造的に日本の保守党の総理大臣はうそつきになるということをあらわしている、55年以降の政治体制のことを言っているのです。けれどもこの解釈改憲をされてきた9条だけれども歴代の自民党内閣、その後の連立内閣も「自衛隊は戦力ではない。軍隊ではない。専守防衛で日本の国だけを守ることが出来て、ほかの国とつるんで戦争は出来ない。集団的自衛権は行使できない」というのが公式見解でありそして、内閣法制局の見解でもあったんです。今ここのところをアメリカが強いプレッシャーをかけて変えさせようとしているんです。
改憲勢力は、9条は、当時日本を占領していたアメリカ軍が、銃で脅して押し付けたものだから自主憲法を制定しなくちゃいけないと言ってきましたが、今この論拠は完全に破綻しました。昨年、日本に9条を変えろと言ってきたのはブッシュ政権の中心人物であるアーミテージ国務副長官であり、パウエル国務長官でした。アメリカによる押し付け9条改憲に自由民主党が全面的に同意している。自民党の改憲草案の安全保障のところは、自衛隊を戦力にする、自衛隊ではなく日本軍にする。このことを明記する。第2項を変えるということです。そして集団的自衛権の行使を憲法に盛り込む、こう言っています。
アメリカが9条を変えたいわけ
アメリカは99年以降一貫して日本に日米安全保障条約という二国間軍事同盟に基づく集団的自衛権の行使をいつでも出来るような国になってもらいたいということを要求し続けています。ここが言わば、なぜ9条が変えられようとしているのか、ということの一番大事なポイントです。
実はこの二国間軍事同盟に基づく集団的自衛権の行使というアメリカの要求の中に、21世紀の戦争とりわけアメリカが国連を無視して世界の各地に先制攻撃をかける体制のからくりがあるんです。
9条第1項をもう一度見てください。前半の「正義と秩序を基調とする国際平和」というのは国連憲章第1条、国連の目標です。後半の「武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」。この国際紛争の武力解決、先制攻撃の禁止は、国連憲章の第2条です。国連加盟国すべてが守らなければいけない条項です。日本国憲法はこの国連の目的と、国連加盟国が守らなければいけないことを誠実に希求すると、国権の発動たる戦争も放棄しますよ、戦争を放棄するから戦争をするための、陸海空軍、その他の戦力はこれを保持しない、こうなるわけです。日本とコスタリカ以外のほかの国は自衛のためには戦争をするから、軍隊を持っています。日本国憲法9条は最初から国連加盟国すべての国々に、「本当に平和を実現したいんだったら、日本国民が誠実に希求しているように、国権の発動たる戦争を放棄しないと平和は訪れませんよ」、こういう一国平和主義ではない、世界への呼びかけを最初からしていることが分かります。
なぜなら、これが第2次世界大戦後、戦争がなくならなかったひとつの理由である国連憲章51条を批判しているからなんです。9条が。ここに集団的自衛権が出てくるんです。国連憲章51条にはこう書かれています。
「この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和および安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない」。国連の安保理で国と国との紛争をどう解決するか決める前に、武力攻撃が発生したら、1国で守ってもいいし、ほかの国とつるんで守ってもいい。これが戦争がなくならなかった大きな理由なんです。
けれども先制攻撃は絶対いけない。でも私たち普通の者から見ると、2003年3月2日から始められたアメリカとイギリスによるイラク攻撃は明らかに先制攻撃でしたね。でも先制攻撃したら国連から軍事的にも経済的にも制裁されるんです。クエートに侵攻したイラクは軍事的経済的に制裁され、フセイン政権がつぶれるまで経済制裁は続いていました。
アメリカとイギリスは制裁されたでしょうか。されませんね。ここに「武力攻撃が発生した場合の集団的自衛権」というからくりがあるんです。アメリカ一国では、絶対にイラク攻撃は出来なかったんです。なぜならイラクとは別な大陸にあるからです。大西洋を隔てていますから。大西洋を越えてアメリカに攻撃を加えられるようなミサイルはイラクにはない、ということは国連の査察ではっきりしていたんです。
だからイギリスを巻き込んだのです。イギリスからドーバー海峡を渡るとフランスで南に下がるとスペインで、その南が北アフリカでアジア大陸のほうに行くとイスラエルがあって、その隣がイラクなんです。地続きといえば地続き。普通のミサイルでイラクからイギリスまで届く。ですから、イギリスのブレア首相の最大のウソは「イラクの大量破壊兵器で45分以内にイギリスを攻撃する能力を持っている」。
これが最大のウソとしてイギリスの議会の査察で批判されたんです。イギリスがイラクから大量破壊兵器によって攻撃されることが予測される事態だから、「攻撃が予測されているのに何もしないのはアホちゃう」といって禁止されている先制攻撃を正当化した、というのがイラク攻撃のからくりなんです。イギリスとアメリカの2国間軍事同盟です。
「攻撃が予測される事態」。皆さん聞いたことがありますね。2003年「備えあれば憂いなし」と、小泉首相が国会に欠けた、「武力攻撃事態法」。このときの国会での最大の議論の焦点は、「攻撃が予測される事態でも、武力攻撃事態に入るんだ」。
アメリカはこれがほしいわけです。北朝鮮のノドンやテポドンミサイルはアメリカには届かないんです。日本の自衛隊を軍隊としてその自衛隊が攻撃される攻撃されることが予測される事態になったらアメリカが日米安保条約という2国間軍事同盟に元ずいて、この東アジア地域に軍事的に展開することが可能になるわけです。これがねらいです。
アメリカの長期戦略と日本の改憲
北朝鮮の危機をアメリカがあおっているのも、日本の世論を変えるためです。だってあんな貧しい国にアメリカは直接の利害はありません。アメリカのねらいは北朝鮮を攻撃して、日本に9条を変えさせて、中国とロシアを軍事的に押さえることです。中国とロシアはかつて社会主義国でしたから、アメリカやヨーロッパが持っているイージス艦のようなITハイテク兵器は輸出されていないんです。その弱いうちに押さえちゃうんです。
アメリカの長期的戦略は、中東の石油はあと60年ぐらいでなくなる。今、埋蔵量がはっきりしていない石油と天然ガスはカスピ海の沿岸にあります。旧ソ連領でロシアへのパイプラインはあります。湖なのでタンカーで運び出せません。山岳地帯なのでタンクローリーでも大変です。
ソ連が崩壊してカスピ海沿岸の小さな国々、トルクメニスタンとか、○○スタンという国が多いのですが、みんなアメリカと仲がいいんです。このカスピ海沿岸の国々から南がアフガニスタンです。その南がパキスタンです。ここをズーッとパイプラインで通してしまえばこれからエネルギーを一番使う、東南アジア、中国の南西部こういう所に送り出すエネルギー-を独占することが出来る。アフガン戦争、イラク戦争のからくりがそこにあるわけです。
民主的な選挙でアフガニスタンの大統領に選ばれたというカルザイさん。あの人が大統領になる前、何をやっていたかというとカスピ海からアフガニスタンを抜けてパキスタンを通ってインド洋に出る石油、天然ガスの利権を獲得したユノガル社というアメリカの石油エネルギー複合企業体の最高経営顧問をやってた人なんです。アメリカの世界エネルギー支配のために送り込まれた人物なんです。
皆さんもご存知のようにパキスタンとインドはすでに核兵器を持って対立しています。何も持っていないイラクやアフガニスタンのようにインド洋に展開する空母から飛び立った空爆機で爆撃するだけでは、核兵器を持っている国は押さえられません。陸軍を展開する必要がある。
今、アメリカのワシントンにある陸軍第1師団の司令部を日本の神奈川県の座間キャンプに移すというのが、アメリカ軍の再編成のねらいです。アメリカの地上兵力を日本に置いておけば、日本は思いやり予算で米軍の光熱費とか、全部タダです。燃料もインド洋までテロ対策特措法で、日本の国民の税金で海上自衛隊が補給するということになっているんです。アメリカの国家予算の最大の問題は戦費だといってるんですが、日本に拠点を持ってくれば、日本のお金で戦争が出来ることになります。
こんな事のために憲法9条を変えていいのか。
9条は世界平和のちから
ユーラシア大陸の西側、ブッシュが「悪の枢軸」と言ったイラク、イランのある地域は戦火が絶えません。しかし同じ「悪の枢軸」といった北朝鮮。核開発疑惑があります。にもかかわらず、今、中国、ロシア、韓国、日本、アメリカ、北朝鮮で6ケ国協議という平和的な外交交渉で問題解決が紆余曲折はありますが図られようとしている。
ユーラシア大陸の西側の戦争と東側の平和、この決定的な21世紀の戦争か平和かの分岐線を、何がつくっているのかと言えば、日本が憲法9条を持っていて、自衛隊が軍隊ではなくて、だから集団的自衛権を行使できないからなんです。日本国憲法は、はっきりと今の世界において、ロシアにも中国にも韓国にも、平和をもたらしているんです。
「この憲法をなくすんですか」、という問題です。このことを私たちが多くの人に、正確に伝えていけば、今いったい誰に大儀があるか、誰が本当に平和を守ろうとしているかが、はっきりするはずです。ぜひ東久留米の過半数の人たちとの対話をめざして、ともにがんばっていきましょう。
ありがとうございました。